こんにちは。院長の小笠原です。
当院のYoutubeチャンネルに治療動画を追加しました!
数十年前に根管治療をした歯の歯茎が腫れてきた。違和感がずっと残っている。
という患者さんの根管治療を行ないました。
その際に根管内に前医が使用した器具が折れて残っていたために、私の方で撤去を行い、再根管治療を行なった治療動画を2症例紹介しています。
治療内容に関しては是非こちらの治療動画をご覧ください。
今回、こちらのブログではリーマー、ファイルの破折について解説いたします。
リーマー、ファイル破折とは?
根管治療という、歯の神経が存在する「根管」を清掃する処置があります。
歯の神経のあった根管は非常に極細で、肉眼で見えない場合も多くあります。その根管を治療している際に、使用した医療器具が根管内に残ってしまうことがあります。

矢印の先にあるのが残った器具です。金属製の器具のためレントゲン写真で白く写っています。
らせん状の刃がついた針状の器具で、形が確認できます。
実際に撤去した器具を見てみると、

長さ2mm程、径が0.3mm程の針状の器具です。
これが根管内に残存してしまうのがリーマー、ファイル破折です。
「リーマー」「ファイル」とは?
根管治療を行なう際に必ず使用する器具があります。
それは「リーマー」「ファイル」と呼ばれる、根管内を清掃するヤスリ状の小さく、細い針状の器具です。
世界中でずっと昔から使用されている、根管治療ではなくてはならないものです。
ヤスリの形状の違いによって「リーマー」「ファイル」と名称が違います。
根管内を削っていく手用の器具で、ギザギザの形状をしており、ステンレス鋼で出来ています。
つまり金属の極細の針で、歯の神経が通っていた細い隙間を掘り進めていく作業です。
そもそも根管は約0.2mm~1mm程の神経が存在していた管(空洞)です。
この治療に使うリーマー、ファイルという器具は世界的に使用されており、基準か決まっており0.6mm~1mmまでのサイズバリエーションがあります。
その極細の金属器具は繊細に使用しなければ、変形、破折(壊れる)することは言うまでもありません。
リーマー、ファイルが治療中に折れる確率は?
折れてしまう原因は、根管内にヤスリ状の先端が食い込み、金属が切断してしまったために残存してしまいます。
食い込んでいるために、そう簡単には取る事は出来ません。
例えばネジですが、ネジ山があるために埋め込むことも取り出すこともできます。埋めたネジのネジ山が潰れてしまった場合は取る事は出来なくなります。
しかし、それだけ細い器具を使っているという事は、折れることも想定の範囲として治療が行われています。
海外の研究データを見てみると、
M Eskibağlarらによる 2023の論文「「根管治療に使用される器具の破損発生率の調査」では、
・ステンレス鋼の手用ヤスリの破折率は 2% ~ 6%
・ニッケルチタン(NiTi)回転ヤスリの破折率は 1.04% ~ 13.54%
と集計報告がされています。
つまり、誰がやっても折れる可能性はあるという事です。
ただ気にすべきは、こちらの論文は海外のものであるという事です。
基本的に海外では、「リーマー」「ファイル」「ニッケルチタン」などの器具は、1回のみの使用で破棄される(ディスポーザブル)のが基本で、国によっては「1回のみの使用」は厳格に規則となっています。
日本では特に折れる確率が高い?
初めに言いますが、日本では他の患者さんに使用した同じリーマー、ファイル、ニッケルチタンファイルを何度も使用します。
数回使用したリーマーは金属疲労により破折するリスクが上がります。
保険治療で安価で治療をしなければならない日本では、器具を何回か同じものを使う(使いまわす)のが普通です。もちろん使った器具は消毒、滅菌をしているので一応、清潔と定義されています。
【日本の根管治療】
治療回数:約2~5回
治療時間:10分~30分以内
治療費:約8000円~20000円以内(患者さんの負担は3割なのでトータル1万円以内になります)
担当医:一般歯科医師
治療費にかかる材料代や時間の確保、人件費も全て含まれますので、1回の治療に30分の時間かけたとしても実際に歯科医師の手元には数千円くらいしか残らない計算となります。
海外では、根管治療はエンドドンティスト(歯内療法専門医)という専門医が治療を行ないます。
日本のような国民皆保険制度はありませんので、治療費は高額となります。
以前、私のブログでも書きましたが海外の根管治療の料金は高額で、10万円~30万円くらいするのは当たり前です☟
アメリカの根管治療の費用
そもそも、海外では日本のように1時間に何人も治療するという事はしませんし、リーマーの使いまわしもありません。専門技術を習得した歯科医師が行うために技術力も高い設定となります。
根管治療がしっかりなされないと抜歯されてしまいますので、それに対する技術、費用対効果が高くなるのは当然です。
日本国では、皆平等に安価で治療を受ける医療を行っているため、治療コストや技術に対する報酬も安価に設定されています。そのために、使用されるリーマー、ファイルなどの器具の使いまわしも国は容認しており、当たり前になっています。
安い治療を日々行う日本では、海外のデータは当てはまらない可能性があります。
折れて残った器具の撤去は必要か?
必ずしも撤去が必要という訳ではありません。
症状が出てしまった場合に治療を行なうという選択肢が勧められています。
基本的に根管治療が必要なのは、根管が細菌感染して膿んできてしまった場合です。神経を抜いた歯は痛みを感じることはありません。そのために根管内に細菌が侵入すると気づかないうちに根の先で膿んでくる場合があります。
診断名は病態に応じ、根尖性歯周炎、歯根嚢胞と呼ばれます。
症状が必ず出るという訳ではなく、ご自身では何も症状が無く何年も経過するという場合も多くあります。
最初に紹介したYotube動画の患者さんも20年以上症状が無かったものの、ここに来て状態が悪化したという具合です。
細菌感染する理由と、器具が残っていることはイコールではありません。
前の項目でお話しましたが、一応器具は滅菌して使用しますので清潔とされています。ですので清潔な器具が体内に残ったとしても、それ自体が悪さをするわけではありません。
器具が折れたその先が既に感染しており、細菌が残っていた場合。
根管治療をしたが根管内の清掃が不十分であった場合。
後に、虫歯なり再度感染が起こってしまった場合に、除去を含めた再根管治療が必要となります。
根管治療もすればするほど、成功率は下がり、歯を削ったりと少なからず歯へのダメージが増え、歯の寿命が短くなります。
実際に歯の状況を精密検査した後に、担当する歯科医師と相談する必要があります。
治療は保険の適応か?
正直なお話をすると、根管内異物除去(RBI)として保険適応の治療となっています。
しかし歯科医師全員が出来る治療ではなく、技術をもった根管治療が得意な歯科医師しか行なうことは出来ません。
報酬は1500円程度と、サービス料金。材料コストと技術料のつり合いが取れないので、結論やってくれる歯医者はあまりないのではないでしょうか?
保険適応として含められているだけで、現場を知らないお国の方が机上で反映させただけの報酬です。保険治療にはこのような現場と乖離した内容が多く盛り込まれています。
保険治療は財源が決まっているのでその中で設定されますし、あたかもその治療をやった体(テイ)にして請求されると困るので、報酬が無いものもあります。例えば「ラバーダム」があります。ラバーダム防湿は保険では0円で請求できません。
話を戻して、保険適応では治せないと考えるのが一般的な歯科医師からの考えだと思われます。
「破折ファイルの除去だけを自費で」という考えは混合診療になります。
そもそもしっかりと治したいのに、保険で安価に根管治療で治すことは難しいと考えます。
自費治療ですと、撤去だけで約1万円~5万円。根管治療全体で約7万円~20万円かかるでしょう。
他の業態ですが、有名な「水道トラブル5000円~♪トイレのトラブル8000円~♪」とあります。医療技術である根管治療の報酬がそれらと同等、もしくは低いということ自体が変な話です。
あくまで個人的な感想ですが、破折リーマー、ファイルに関しては、それを担当医が患者さんに報告していた場合はしょうがないとは思います。折れる可能性があるので。
しかし、もし、報告していなかった場合は、その器具の撤去も含めた再根管治療の治療費は、前医が負担するべきと思われます。患者さんは被害者と思います。
《まとめ》
根管治療を行なう上で、使用器具の破折はあり得ることです。ただ歯科医師も折れないように最大限注意しながら日々、治療を行なっています。
根本的な事ですが、根管治療をしない状況を作ることも大切です。
根管治療が必要なのは、虫歯を放置してしまい、神経まで虫歯が侵入してしまった場合に初めて根管治療となります。初期の段階で虫歯の治療が出来た場合はもちろん、自費の治療になりますが、虫歯が大きくても神経温存療法により神経を取らない治療を行なえば根管治療の必要はありません。
当院では神経温存療法を行いますので、当院へ受診している患者さんは、神経を抜く処置はほぼ回避しています。
☞神経を取らない治療
定期検診による早めの虫歯チェックや、そもそも虫歯にならない予防を心掛けるのが必要ですね。
☞虫歯にならない方法
この記事の著者・監修者:院長・歯科医師 小笠原慶一