院長の小笠原です。
歯医者をしていて昔から患者さんからよく聞かれる質問ナンバーワンと言っても過言ではないのは
「治療したらどのくらい持つのですか?」という質問だと思います。
これは全国どこでも同じように聞かれる質問です。
特に倹約家が多い関西では、患者さんから「これ、どのくらい持つん?」とよく聞かれると、聞いたことがあります(笑)
確かに、治療した歯がどのくらい持つのか?という事は気になる所です。歯科では歯を治す際に「材料」を使います。その材料にも種類があり、それによって値段や耐久性が違うのが当たり前です。
今回の記事では、治療した歯の予後についてお話したいと思います。
さっそく結論
先に結論をお話ししますが、「その人によります」というのが回答です。
正直な話、同じ材料を使おうが
・お口の中の環境
・お手入れ
・嚙み合わせ、歯並び
・残っている歯の状態
・年齢
・担当医の技術力(←かなり重要)
などによって全く異なります。
例え話ですが、皆さんは新車を購入した際に、担当者に「この車どのくらい持ちますか?」という質問をされるでしょうか?
多分、担当者も困りながら「その方の乗り方や、メンテナンスによって違いがありますが、適切にメンテナンスを行なえば10年以上乗っている方もいますよ」と言うような説明があるかと思います。正直なところ歯の材料もこのような回答になるかと思います。
実際に歯と車では違いますが、何百万円もする車でも壊れるものは壊れます。乗る頻度や運転の仕方、または運が悪く5年以内に故障なんてことも実際にはあり得ます。何百万円もしますが、保証期間は3年~5年でしょうか。
歯は毎日3食以上、一回の食事で咀嚼回数は約600回と言われ、歯はすごい回数使います。
それだけ毎日酷使しますし、お口の中は「熱いお味噌汁を啜って、直後に水を飲む」といった急激な温度変化や、湿度90%以上という劣悪な環境で使用するのが歯です。そのような環境で人工材料は経年劣化を起こします。
昔からある銀歯ですが、平均寿命は5年~7年とも言われ、治療費が3割負担の数千円で、もし10年持てばとてもすごいことなのかもしれません。
では、あなたは「何年持ってくれたら良いと思っていますか?」
10年ですか?20年ですか?
それは長ければ長い方がいいと思います。しかしどのくらい持つかは神様じゃない限りそんなことは分かりません。
しかし一生持つ方法はあります!
それは、
金庫にしまっておいてください。
「セラミック」「ジルコニア」は使わずにしまっておけば一生変わらないままです。
「セラミック=陶器」の材料は、100年以上前の食器が状態良く残っている様に、割れない限り永久に劣化しません。(その優れた材料の性質を生かして自費の歯の治療に使われています)
しかし「レジン」はダメです。これらは経年劣化を起こす材料ですので、置いておいても変形します。
ただ、歯は使わなければ意味がありません。
この後詳しくお話しますが、一応「材料の寿命の目安」はあります。まずは材料は一生は持たないという考えを元に参考にしてください。
・詰め物の耐用年数
詰め物の耐久年数のデータがあります。

こちらは古い調査ですが、保険治療が行われる日本のデータで、基本的な材料は昔から変わっていないのでこちらが参考になると思われます。
簡単にまとめると
・レジン(プラスティック樹脂):もって6年
・銀歯:5年~7年
・金属ブリッジ:7年~10年
といった所です。
注意すべきところは「脱離」といって詰め物が取れてくれればいいのですが、取れずに詰め物の中で虫歯が進行していることが多くあります。
全ての材料で、5年以降で「歯髄炎」の可能性出てくるために、再度虫歯になると神経を治療しないといけない可能性もあるという事です。
もう一つ、今度は「青山 貴則ら、口腔衛生会誌 2008」の2000年代の論文ではこのように出ています
各修復物の再治療率と10年生存率
・レジン :35.5% 60.4%
・メタルインレー:28.1% 67.5%
・メタルクラウン:37.2% 55.8%
・メタルブリッジ:60.0% 31.9%
10年以上持つ場合もありますが、再治療の可能性がある事は考えておかなければなりません。
でも材料の選択だけが原因でしょうか?
一番大事なことですが、
「虫歯になって治療をした」という事は、一番良い状態の「天然の歯」を虫歯にしてしまった習慣や生活環境があるという事です。
虫歯を治したからと言って、治療前と同じ歯のケア方法をしていた場合、再度虫歯になるのは当たり前です。
例えば、ダイエットをしようとしても食生活を改善しなければ再び体重が戻ることは言うまでもありません。
・セラミックの耐久性
2016年のS.morimotoらの論文では、セラミック材料の推定生存率は
5年後で92%~95%
10年後で91%
と述べています。
失敗の原因は
・破折、欠けが4%
・神経にトラブル3%
・二次虫歯が1%
と言っており、セラミックの失敗は割れてしまったことが主であり、再度虫歯になるリスクは低いことが分かります。
当院は虫歯治療を自費専門で行う病院ですので、セラミックを日常的に使用します。
毎日セラミック修復を行っていますが、割れたり欠けたりしてくる患者さんは年に1人いるかどうかです。そのためにセラミックを第一選択肢としています。
しかし、この情報は少し注意が必要です。
日本でセラミック、ジルコニアで治療を行なう際の注意点
注意が必要なことは、論文のデータが海外の物だという事です。
日本と海外の医療には違いがあります。
成人において日本は保険医療で、海外は自費医療が基本となります。(※国により細かな違いあり)
保険でカバーされる医療では、財源に限りがありますので国民一律同じ治療。治療の内容も、貧富の差に関係なく平等に最低限受けられる内容となっています。
そのため、より良い治療の希望があれば自費で行うのが基本です。
ですので、日本人はお口の中に銀歯とプラスティックが多く使われています。
「歯科業界あるある」ですが、海外から見ると銀歯が入っていると驚かれます。先進国で銀歯を使うのは日本だけです。
海外では基本は自費治療で、医療費が高額です。そのため、医療費に見合った治療が施術されます。
どういうことかと言うと、わざわざ高い治療をされるのに安い材料を使わないという事です。ブラジルでは治療費のなかでも安いレジンが多用されるなど、国により違いはあります。
担当医も専門性があり、専門の補綴医がセラミック系の材料を使い、しっかりと費用を請求します。
アメリカなどでは訴訟リスクもあるために、トラブルの無いようにしっかりと治療を行ないます。
ですので、全てとは言いませんが、
日本で日常的に保険治療をしている先生が、たまに自費の治療をしたとしても精度が悪い場合もあります。
当院には「他院で治療したセラミックが欠けた」「他院で入れたジルコニアに不具合がある」と言う患者さんがこれまでにも多く来院されています。
海外の専門性で自費の治療を行なっている先生と、日本で保険医療をしている先生で、たまに行う自費治療の精度が同じわけはありません。
歯科治療は技術職ですので、同じ材料を使えば同じ結果になるという訳ではありません。担当医の腕次第です。
また海外とは虫歯予防の習慣に大きく違いがあります。海外ではセルフケアを重視し、水道水にもフッ化物が含まれており、国民的に虫歯になりにくい傾向にあります。
日本で「セラミック 寿命 どのくらい持つ」などで検索すると、歯科医院のホームページにたどり着き、皆同じように10年以上など、海外のデータをそのまま記載しています。そのクリニックでのデータではありませんので、ネットの情報に踊らされないように注意が必要かもしれません。
当院でのセラミック治療例
では当院で行ったセラミック症例をお見せします。
e.max(イーマックス)というセラミック材料を使用しています。このe.maxは現在も当院で使用しますし、世界中で使用されるオールセラミックです。
10年前に治療したセラミックインレーとセラミッククラウンですが、現在も患者さんのお口の中で、虫歯にもならず問題なく使用されています。
治療前の状態です。

銀歯の中に虫歯があったので虫歯治療を行ない、セラミックインレーによる修復を行いました。
今回の症例は一つ奥の歯の治療も行い、そちらはクラウンで処置しました。

今回の製作されたセラミックインレーとセラミッククラウンです。
セラミックインレーをセットした時の写真です。

色合いも自然で綺麗に仕上がっています。
両方の歯を同じタイミングで装着しました。装着した後の写真です。

よく見るとインレーのつなぎ目は確認できます。一眼レフカメラで取れば詳細に写るので見えますが、実際に口の中を見て確認すると、治療した箇所が分からないレベルです。

綺麗な仕上がりですね。
では10年後の状態の記録をお見せします。

いかがでしょうか?
若干、歯とのつなぎ目が目立ってきたかもしれません。
歯とセラミックはレジンセメントという接着剤で接着してあります。ミクロ単位の表面に出ているレジンのつなぎ目が劣化して目立つことはあります。
しかし、歯とセラミックは綺麗に維持しています。

手前の歯との間のセラミックのつなぎ目は、歯ブラシではお掃除できないので、少し着色が見られますが、虫歯ではありません。
クラウンもインレーも共に、10年後の現在もお口の中でしっかりと機能して維持しています。
当院では日々、毎日のようにセラミックによる治療を行ない、トラブルもほぼなく、患者さんのお口で状態が良く長持ちしている経験から、セラミックによる治療を第一選択としています。
セラミックでも割れることもあります。特に、割れる原因は担当医の腕によるところで、よく割れる先生は、よく割れます。割れるときは1,2年以内と早期に症状が出ます。セラミックの取り扱い技術が低いからです。そのような担当医では、割れにくいジルコニアを代替えとして良く提案されます。
そもそも技術力が乏しい場合は、材料をいいものを使えば良いものが仕上がるという事ではありません。
セラミックやジルコニアが早期に、割れる、欠ける、取れるなどの不具合が出て、担当医から明確な指摘や相談が無かった場合は注意が必要です。
セカンドオピニオンを受け、転院したほうが良いかもしれません。その担当医では治せません。
《まとめ》
歯の詰め物や被せ物の寿命と言われると、正直誰も分からないのが実際です。これまでに記載した目安のデータはありますが、患者さんひとりひとり歯並びや噛み合わせ、噛む力や、歯ぎしり食いしばりなどの癖によって、歯へのダメージは千差万別です。担当した歯科医師の腕によって違いがあることも大切です。
最後にもう一つ大切なことを忘れてはいけません。
歯を治療したら「もう治った!」と思って過ごされている方が多くいらっしゃいます。
まず「虫歯を治療をした」ということは「今までの歯のケアや習慣が間違っていた」と思った方が良いです。
虫歯にならない人は、一生虫歯になりません。そのような習慣をしているからです。
私はですが、成人になってから虫歯になったことはありません。神経を取った歯は1本もありません。多分これからもないでしょう。虫歯は予防が出来ます。
虫歯にならない方法を過去ブログで説明していますので参考にしてください☟
歯医者へ行くたびに虫歯が見つかる(解決法‼) どこよりも分かる虫歯の解説①【虫歯になりやすい人編】
虫歯になって治療した場合、今までの習慣を改めなければ、他の歯だけでなく、治療した歯も再度、2次虫歯になります。特に保険材料を入れている歯はつなぎ目からの虫歯リスクが高いです。
材料はあくまで、材料です。
より良い材料を使用することで、歯を長く持たせることは可能です。
しかし、それ以上に重要なことは
①本人が虫歯に再度ならないように注意すること
②技術力のある歯科医師に直してもらうこと
これにつきます。
治療した歯の持ちは、あなた次第なのです。